北九州で働く企業女性が中心となって活動を続ける「感度の高い企業女性が提案する地方創生@北九州」では、欧米富裕層を狙った観光戦略について議論を重ねている。事務局は、日本航空北九州空港所長・佐藤由美子氏、西日本新聞北九州本社営業部長・甲木正子氏、北九州市産業経済局観光にぎわい部・菅優子氏と筆者が務め、メンバーは地元企業の第一線で活躍する女性9割、男性1割の約50人程度。
北九州の訪日外国人観光客は2011年に6万5千人だったものが、15年には25万2千人と、4倍近くに増加している。その7割が韓国と台湾からの訪日客で、欧米からの訪日客はほとんどいない。しかし、そこをあえて「欧米富裕層」にターゲットを定めたところがミソである。
観光学にはラケット理論というのがある。以前にも本コラムで紹介したが、おさらい。最初にテニスラケットを想像してほしい。観光客の発地と着地をラケットの柄とした場合、ガットを張る枠が周遊観光のエリアとなる。例えば、日本からヨーロッパへ行くツアーを考えた場合、ラケットの握り部分が発地の東京とすると、柄と枠の結合点が着地のパリとなる。結合点からぐるりとまわした枠が周遊観光の範囲だ。逆に、卓球のラケットのように握る柄が短ければ、周遊範囲は狭くなる。つまり、遠くへ行くほど周遊観光のエリアが広くなるというのがラケット理論だ。
欧米富裕層のラケットがテニスラケットであることを考えると成田で入国した訪日客が北九州へ足をのばす可能性は十分にある。また、「東京、箱根・富士山、京都、大阪」のゴールデンルートをすでに体験した来日2回目以上の訪日客や日本人の暮らしが見たいという外国人観光客も潜在的に存在するはずだ。
そこで「感度の高い~」では、カフェでもクレジットカードが使えるようにスクエアレジやエアレジといった会計システムや、環境都市ならではの水素自動車による移動手段などを市に提案している。中でもユニークベニューとして「小倉城にホテル機能を!」は強く訴え続けている。
北九州市は国家戦略特区であるとともにMICE強化都市にも選定されており「城に泊まる」というコンセプトは強力なアピールポイントにもなる。現在の小倉城は1959年に再建された鉄筋コンクリート構造だが、内部を伝統の小倉織や最先端の環境技術を駆使しリノベーションすることで世界に誇れる城に再生することは十分可能である。 また、小倉城をランドマークと位置付けることでシビックプライドの醸成も期待できる。これからの時代は観光が地域を活性化するのではなく、地方創生が観光産業を支えていく時代になるだろう。